2014年,読んでよかった本3選

今年私が読んだ本から。

D.A.ノーマン,野島久雄訳『誰のためのデザイン?』(新曜社)
デザイン,ユーザインタフェースに関する古典的名著。1988年刊行だが,エッセンスは今も色あせない。一方で本書に挙げられている実例を見ると,現代は当時と比べてだいぶ状況が改善されているということがわかる。UIといえば個人的に腹立たしいのはiOSが6から7にバージョンアップした際の明らかな改悪で,Appleはちゃんと仕事をしろという感じである。
井上優『相席で黙っていられるか―日中言語行動比較論』(岩波書店)
言語行動からみた日本語・中国語の比較言語学的考察。中国語は大学時代の第二外国語だったので文法の細かい話が面白かった。井上氏は奥さんが中国人だそうで,実感のこもった話題が多数あるのもよい。それにしても,社会人になってからというもの普段は些細な言葉の端々を気にする余裕が持てないでいるなぁ。
西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』(中公新書)
言語学畑でもう1冊,認知言語学をめぐる言語学者と哲学者の対話。対談形式の本はまとまりがないことが多いので普段は敬遠するのだが,この2人だったら面白くないわけがない。認知言語学は考え方が柔軟なところが好きで,なんというか頭いいなあと思うことが多い。対談ながら終盤はかなり突っ込んだ議論になっていたのもよかった。
番外編:夏目漱石『吾輩は猫である』(青空文庫)
初めて読んだのはもう20年ほど前か,たしかポプラ社の,子供向けにルビと注がたくさんついているものだったと記憶している。青空文庫のものがKindleで読めるのでなんとなく再読を始めた。当時はストーリーにばかり気をとられていたが,再読に及んで気づいた――猫が可愛い! 「足の裏へ泥が着いて、椽側へ梅の花の印を押す」なんてサラッと書いてあるが,キュートじゃないか。というわけで,これは大人の猫好きのための小説なのだった。